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設備保全には、予兆保全・予防保全・事後保全など、いくつかのアプローチがあります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあり、工場の規模や体制によって最適な方法は異なります。ここでは代表的な3つの手法の違いと、自社に合った選び方のポイントを整理します。
予兆保全(予知保全)は、設備の稼働データを解析し、異常の兆候を早期に把握することで突発的な故障を未然に防ぐ手法です。振動・温度・電流などの情報をセンサーで常時取得し、AIや統計分析によってわずかな変化を検知します。これにより、異常音や過加熱など人が気づきにくいサインを自動で捉え、計画的な対処が可能となります。
さらに、取得したデータを保全履歴や稼働実績と結びつけることで、部品交換や更新の判断を定量的に行うことができます。予防保全が「定期点検型」であるのに対し、予兆保全は「状態監視型」として、より精度の高い保全計画を実現する手法です。
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予防保全は、あらかじめ立てた計画に基づいて定期的に点検やメンテナンスを行う手法です。3ヶ月に1回、1年に1回といった周期で実施し、摩耗や劣化による故障を防ぐことを目的としています。
定期的な保全により突発停止のリスクを減らせる一方で、実際にはまだ使用できる部品まで交換してしまう「オーバーメンテナンス」が発生する場合もあります。コストや生産ラインへの影響を踏まえ、適切なサイクル設計が重要です。
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事後保全は、設備に故障や異常が発生した後で修理や交換を行う手法です。突発的なトラブルに対応するため、保全計画を立てずに運用するケースが一般的です。
一見すると非効率に見えますが、すべての設備を予防・予兆保全の対象にするのは現実的ではありません。重要度が低く、故障時の影響が小さい設備では、事後保全の方がコスト効率に優れる場合もあります。設備の役割や稼働リスクを踏まえて、他の保全手法と使い分けることがポイントです。
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設備保全の最適な手法は、工場の規模や設備の重要度、現場体制によって異なります。すべての設備に同じ方法を適用するのではなく、停止の影響度や復旧コストを踏まえて手法を組み合わせることが重要です。
たとえば、生産ラインの中核となる装置や止めてはいけない設備には、突発停止を防ぐための予兆保全が向いています。一方、劣化傾向が把握しやすく、定期点検でリスクをコントロールできる設備は予防保全が適しています。さらに、影響が限定的な補助設備では、事後保全の方がコスト面で合理的な場合もあります。
自社に合った保全方針を検討する際は、設備ごとの役割・稼働データ・故障履歴をもとに、どの範囲を「状態監視」で見るか、どこを「定期点検」でカバーするかを整理することがポイントです。データをもとに優先順位を可視化することで、感覚ではなく根拠ある判断ができるようになります。
設備の突発停止が生産全体に大きな影響を与える場合や、製造プロセスの中で品質リスクを伴う工程では、予兆保全が特に効果を発揮します。ラインの中核を担う装置、あるいは停止時の復旧に時間を要する設備が代表的な対象です。
また、DX推進や新工場の設立を検討している製造業にも適しています。構想段階から予兆保全の仕組みを取り入れることで、将来的なデータ連携やスマート保安への発展を見据えた設計が可能になります。既存設備への後付け導入に比べ、センサー配置やネットワーク構成を最適化しやすい点も大きな利点です。
予兆保全は、振動・温度・電流などのデータを常時取得できる環境が整っているほど導入効果が高まります。異常を数値として把握できるため、経験や勘に頼らず状態を判断でき、チョコ停や計画外停止の発生を大幅に抑えることが可能です。一方で、センサーやAI解析環境の構築には一定の初期投資が必要なため、重要設備から小規模に試すPoC(概念実証)で効果を確認しながら、段階的に適用範囲を広げていくのが現実的です。
劣化や摩耗の進行が比較的予測しやすく、定期点検でリスクを抑えられる設備では、予防保全が効果的です。生産ラインの中でも、稼働条件が安定しており、部品交換や潤滑などの作業を計画的に行える装置が主な対象となります。
突発停止の発生を防ぎながら、品質と稼働率を一定に保ちやすい点がメリットです。一方で、実際にはまだ使用できる部品まで交換してしまう「オーバーメンテナンス」が発生する場合もあります。交換サイクルを一律で決めず、稼働時間や使用環境に応じて柔軟に調整することで、コストと安定稼働の両立が図れます。
既存工場では、予防保全をベースにしながら点検データをデジタル化し、徐々に状態監視へと移行していくアプローチも有効です。紙やExcelで管理している点検記録をシステムに取り込むだけでも、異常傾向の把握が容易になり、将来的な予兆保全へのステップにつながります。熟練者の経験をデータとして蓄積し、次の保全レベルへと高めていく起点にもなる手法です。
故障が発生しても生産全体への影響が小さい設備や、代替機が確保できる装置では、事後保全が現実的な選択となります。停止による損失が限定的で、修理コストや復旧時間が明確に見積もれる場合に適しています。
事後保全は、すべての設備を予兆保全・予防保全に置き換えられない現場で、コストバランスを取る手段として有効です。限られた人員で複数ラインを管理する工場では、重要設備に保全リソースを集中させ、補助設備は事後対応で運用するなど、優先順位を明確にすることで効率的な保全計画が立てられます。
また、点検や修理の履歴を記録し、故障の傾向をデータとして蓄積することで、将来的な予防保全や更新計画の判断材料にできます。単に「壊れたら直す」ではなく、「どこまでを事後対応とするか」を戦略的に設計することで、無駄な投資を抑えながら安定稼働を維持できます。
保全の最適解は、すべての設備に共通するものではありません。設備の重要度や停止時の影響、生産ライン全体への波及、そして保全にかけられる人員・コストなどを総合的に判断し、複数の保全手法を組み合わせて運用することが重要です。
まずは現場で起こりうる不具合や異常のリスクを洗い出し、対応の優先度を明確にすることが第一歩です。そのうえで、設備ごとに適した手法と実施タイミングを整理していくことで、無駄のない保全体制を設計できます。
次の項では、不具合・異常への対応優先順位の考え方と、保全タイミングの違いを具体的に見ていきましょう。
保全方法を検討する際は、まず現場で起こりうる不具合や異常を洗い出し、それぞれのリスクと生産への影響度を整理します。突発停止や品質不良など、影響が大きい項目は優先順位を高く設定し、発生頻度や影響の小さいものは低く抑えることで、限られたリソースを効果的に配分できます。
この優先度設定を行っておくと、どの設備にどの保全手法を適用すべきかが明確になります。高リスクの設備には予兆保全を、中リスクのものには予防保全を、低リスクのものには事後保全をといった判断がしやすくなり、工数の無駄や重複作業を防ぐことができます。
また、優先順位の可視化は経営層への説明にも有効です。保全計画を「感覚」ではなくリスクとコストの根拠に基づいて示すことで、投資判断の納得感を高め、保全体制の改善につながります。
設備保全の実施タイミングは、採用する手法によって大きく異なります。予防保全はあらかじめ決めた周期で点検やメンテナンスを行い、事後保全は故障や不具合が発生してから修理を行うのが基本です。予兆保全は設備を常時モニタリングし、異常の兆候を検知した段階で点検を実施します。
それぞれのタイミングの違いによって、故障リスクや保全コスト、作業計画の立てやすさが変わります。計画的な保全を重視するなら予防保全や予兆保全、運用コストを抑えたい場合は事後保全を検討するなど、自社の生産特性に合わせたバランス設計が必要です。
また、各保全のタイミングを一覧化し、稼働データや点検履歴と照らし合わせることで、保全周期の見直しや最適化のヒントが得られます。現場の負荷を減らしながら安定稼働を維持するためにも、「いつ保全を行うか」という視点を意識的に持つことが重要です。
予兆保全・予防保全・事後保全のいずれも長所と課題があるため、保全方法を検討する際は、製品単体ではなく全体のバランスや投資効果の視点を持つことが、現場と経営の双方にメリットをもたらす鍵です。
第一実業では、メーカー中立の立場で保全方法の検討からPoC、本導入までサポートしており、自社に合った適切な進め方を一緒に考えることが可能です。
TBM(Time Based Maintenance/時間基準保全)とCBM(Condition Based Maintenance/状態基準保全)は、いずれも予防保全に分類される考え方です。どちらも定期的な点検や整備を行う点は共通していますが、 点検の判断基準を「時間」に置くか、「設備の状態」に置くかによって運用の方針が異なります。
TBMは「一定の周期で計画的に保全する」手法であり、CBMは「設備の状態を見ながら必要なタイミングで保全する」手法です。目的やコスト、現場の体制に応じて使い分けることで、より効率的な予防保全を実現できます。
TBM(時間基準保全)は、あらかじめ決めた周期に従って点検やメンテナンスを行う予防保全の考え方です。数カ月に1回、1年に1回など一定の間隔で設備を点検し、設備の状態にかかわらず計画的にメンテナンスを実施します。
定期的な保全により、設備の性能を安定して維持できるのが特徴です。特に安全性が重視される設備や、稼働停止のリスクを最小限に抑えたい工程では、TBMが有効なアプローチとなります。
一方で、状態に問題がない部品まで交換してしまう「オーバーメンテナンス」が発生しやすく、コストが増加する傾向があります。適切な保全周期を見極め、過剰なメンテナンスを防ぐことが重要です。点検記録や稼働データをもとに周期を最適化することで、TBMの効果を最大限に発揮できます。
CBM(状態基準保全)は、設備の点検結果や稼働状態に基づいてメンテナンスを行う予防保全の考え方です。一定の間隔で点検する点はTBMと同じですが、設備の状態を確認したうえで、必要な場合のみ部品交換や修理を実施します。
状態に問題がない部品を使い続けられるため、保全コストの抑制やメンテナンス作業の効率化が期待できます。特に、稼働データや点検記録をデジタルで管理している現場では、設備の傾向を把握しやすく、CBMへの移行効果を実感しやすい手法です。
一方で、判断基準が曖昧なままだと、不具合の見落としや対応の遅れにつながるリスクがあります。CBMを導入する際は、点検データの精度と判断ルールを明確に定めることが重要です。データに基づく判断体制を整えることで、より安定した保全計画の実現につながります。
設備保全には、予兆保全・予防保全・事後保全の3つの手法があり、それぞれに特長と課題があります。重要なのは、自社の生産体制や設備の重要度に合わせて最適な方法を選ぶことです。
まずは発生しやすい不具合や異常を洗い出し、それぞれの影響度を整理してみましょう。リスクを見える化することで、無駄のない保全計画を立てやすくなります。
保全の最適化は、現場の安定稼働だけでなく、将来のスマート保安やDX推進にもつながります。保全全体の考え方を整理したい方は、下記のTOPページから関連コンテンツをご覧ください。
常務執行役員CSO
上野 雅敏さん
常務執行役員CSO
上野 雅敏さん
現場課題に沿った
設備保全DXを提案
総合機械商社の第一実業は、プラント・製造業分野で75年以上にわたり現場の設備導入と運用を支援※してきました。
石油・化学・製紙など重厚長大産業の設備を扱い続けてきたノウハウを基盤に、メーカー中立の立場から各種産業へ保全DXや予知保全など新しい取り組みを提案。理想論ではなく、現場に根ざしたリアルなDX提案を実現します。