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TBMとCBMの併用で考える保全予算構築のポイント

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目次

設備保全の予算は、毎年同じ金額を積み上げるだけでは見直しにくい領域です。定期修理や部品交換は生産停止を防ぐために欠かせませんが、実際の劣化状態と作業周期が合わない場合、まだ使える部品の交換や不要な点検工数が発生することがあります。

次年度以降の保全予算を考えるうえでは、従来のTBM(時間基準保全)をすべて置き換えるのではなく、設備の状態を見て保全タイミングを判断するCBM(状態基準保全)をどう組み込むかが論点になります。

重要なのは、定修費を単に削ることではありません。設備停止のリスクを抑えながら、固定費化しやすい保全コストを見直し、必要な保全へ予算を再配分することです。

次年度以降の保全予算は「定修」前提から「状態監視」併用へ

TBMは、カレンダー日数や稼働時間などを基準に、あらかじめ決めた周期で点検や部品交換を行う保全方式です。たとえば「半年ごとに交換する」「2,000時間運転ごとに点検する」といった形で、計画的に保全作業を組み込みます。

TBMの強みは、予算化しやすいことです。作業時期、必要部品、外注手配、人員配置を事前に見通しやすく、定修計画にも組み込みやすい運用といえます。

一方で、設備の使われ方や負荷が変わっても同じ周期で作業を行うため、状態によっては過剰保全になりやすい点に注意が必要です。

従来のTBM(時間基準保全)が抱える「過剰保全」のムダ

もちろん、重要設備では安全側に倒した保全判断が必要です。ただし、すべての設備を同じ周期・同じ深さで点検し続けると、部品費、作業工数、外注費が積み上がり、保全予算を圧迫しやすくなります。

保全予算にコスト見直しの圧力がかかる場合、まず確認したいのは「何を削るか」ではなく、どの作業が状態に関係なく固定的に発生しているかという視点です。

CBM(状態基準保全)の組み込みで見直せるコスト

CBMは、設備の状態を示すデータをもとに、点検や交換の要否を判断する保全方式です。振動、温度、電流、圧力、潤滑油の状態などを継続的に確認し、劣化の兆候が見えたタイミングで手を打ちます。

TBMが「時間」を判断基準にするのに対し、CBMは設備の状態データを判断基準にする保全方式です。そのため、CBMを導入すると、まだ健全な設備に対する一律作業を見直しやすくなります。結果として、部品交換のタイミングや点検範囲を現場の実態に近づけやすくなります。

まだ使える部品の廃棄ロスを減らす

定期交換では、故障を防ぐために早めの交換を行うことがあります。これは設備停止を防ぐうえで有効ですが、状態を確認しないまま一律に交換すると、部品寿命を十分に使い切れない場合があります。

CBMでは、振動や温度、電流などの変化を見ながら、交換が必要な兆候を捉える運用を目指します。部品の状態を見て判断できるようになれば、交換時期の前倒しを減らす余地が生まれます。保全予算の説明では、単に「部品費を削減する」と言い切るよりも、交換周期の妥当性をデータで見直し、廃棄ロスを抑える考え方として整理すると通しやすくなります。

分解点検工数を見直す

分解点検は、設備内部の状態を確認するために有効ですが、対象設備が多い場合は停止時間や作業者の工数、外注費などが大きくなります。

状態監視によって異常兆候を確認できる設備では、すべてを同じ頻度で分解するのではなく、データ上の変化が見える設備に重点を置く運用が考えられます。この考え方を予算に反映すると、一律点検から重点点検へ切り替える予算ロジックを組み立てやすくなります。

CBMと予知保全は「段階」で分けて考える

CBMと近い言葉に、予知保全があります。CBMは設備の状態を見て保全タイミングを判断する考え方であり、予知保全は蓄積したデータやAIなどを活用して、異常や故障の兆候をより早い段階で捉える取り組みです。

つまり、CBMは予知保全へ進むための土台にもなります。いきなりAIで故障時期を予測するのではなく、まずはセンサーで状態を取り、正常時と異常時のデータを蓄積することが出発点です。

保全予算では、CBM導入費と予知保全の将来的な活用を分けて整理すると、投資の目的が明確になります。初年度は状態監視の仕組みづくり、次年度以降は蓄積データを使った保全基準の見直し、という段階設計がしやすくなります。

初期投資と見直し余地を分けて説明する

CBMや予知保全を始めるには、センサー、通信環境、データ蓄積、分析体制などの初期投資が必要です。そのため、初年度だけを見ると、従来の定修費に加えて導入費用が発生するように見える場合があります。予算申請で重要なのは、導入費を単独で見るのではなく、将来的に見直せる保全費とセットで説明することです。

たとえば、部品交換費、分解点検工数、突発停止時の復旧対応、休日・夜間対応の負担など、既存の保全活動で発生しているコストを洗い出します。そのうえで、状態監視によってどの項目を見直せるのかを整理します。CBMの予算化で求められるのは、「新しい設備投資」ではなく「保全費の使い方を変える」説明です。

固定費削減ではなく、保全費の再配分として説明する

保全費は、安全や稼働維持に関わるため、単純に削ることが難しい費用です。そのため、削減額だけを前面に出すと、現場側からは設備リスクが高まる施策として受け取られることがあります。

CBMの導入は、必要な保全まで減らす取り組みではありません。状態を見ながら、不要な作業を抑え、必要な作業に予算を寄せる取り組みです。経営層向けには、固定的に発生していた保全費を見直し、設備の重要度や劣化状態に応じて配分し直す施策として説明すると、予算の意義が伝わりやすくなります。

予算申請を通すための「段階的な導入」のポイント

TBMからCBMへ一気に切り替えると、現場の運用負荷が高まり、判断基準も不安定になりやすくなります。センサーを付ければすぐに最適な保全判断ができるわけではなく、設備ごとの正常値や異常傾向を把握する期間も必要です。

そのため、次年度以降の保全予算では、すべての設備を一斉にCBM化するのではなく、TBMとCBMを併用するハイブリッド運用が現実的です。既存の定修計画を維持しながら、一部の重要設備で状態監視を始め、データを蓄積する。そこから点検周期や交換基準を見直す流れです。

まずは重要設備からCBM化し、実績を作る

最初に対象にすべきなのは、止まると生産や品質に大きな影響が出る設備です。加えて、振動、温度、電流などの変化が取りやすく、劣化の兆候をデータで見やすい設備から始めると、運用を定着させやすくなります。

初年度は、対象設備を絞り、データ収集と異常傾向の把握に重点を置きます。次年度以降に、取得したデータをもとに点検周期や部品交換基準を見直すことで、予算見直しの根拠を作りやすくなります。段階的な導入であれば、現場の不安を抑えながら、小さな実績を予算申請の材料にできます。

第一実業が支援する、保全予算見直しの進め方

第一実業は、製造業・プラント業界で75年以上にわたり現場の設備導入と運用を支援してきました。メーカー中立の立場から、各種産業へ保全DXや予知保全などの取り組みを提案しています。

保全予算の見直しでは、特定のツールを先に決めるのではなく、どの設備にどの保全方式を当てはめるかを整理することが重要です。

第一実業では、複数のメーカー製品や技術を横断的に比較し、現場条件に合わせて組み合わせることを重視しています。TBMを残す設備、CBMへ移行する設備、まずはデータ収集から始める設備を分けることで、一気に変えるリスクを抑えた保全予算を組み立てやすくなります。

次年度以降の保全予算では定修費を前提にしつつ、状態監視と予知保全へ段階的に進む道筋を示すことが重要です。保全費を単純に削るのではなく、設備停止リスクとコストの両方を見ながら、保全費の配分を見直す視点が求められます。