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不具合や異常の有無を確認するために、定期的に設備をチェックする巡回点検。作業員の負担が大きいことから、効率化や省人化も検討すべき業務の一つです。ここでは、巡回点検における課題や効率化のポイント、事例を紹介します。
巡回点検は、建物や設備の状態を確認し、不具合を早期に捉えるための基本業務です。外観や清掃状況のチェックに加え、音・振動・温度といった状態監視、さらに設備によっては圧力やガス漏れ、メーターの検針まで幅広く行います。 これらの記録は、突発停止や事故を防ぐだけでなく、設備の寿命を延ばすうえでも欠かせません。
従来の人手による巡回点検は、多くの課題を抱えています。
目視による点検業務では、ヒューマンエラーが生じる場合があります。測定したデータの入力ミスや、点検箇所の漏れが発生すると、データの整合性が取れず再点検が必要になります。作業員の負担が増えるだけでなく、点検結果の信頼性が低下することも考えられます。
人手による巡回点検は、作業員の経験に頼る場面も少なくありません。しかし、経験に頼りすぎると業務が属人化し、限られた作業員しか点検業務を担えなくなります。作業員が休職・退職してしまった時の引き継ぎや、技術承継にも影響が及ぶでしょう。対応できる作業員が限られると、業務のブラックボックス化にも繋がります。
作業員の勘や経験に依存した場合、点検品質のばらつきも発生します。作業員によって点検結果が異なった場合、判断ミスが生じたり、不具合や異常の兆候を見逃したりするリスクが高まります。データの信頼性が低下し、保全計画に影響が及ぶ可能性もあります。
巡回点検業務では、報告書の作成や管理も負担となります。従来の手書きによる点検項目の入力や報告書の作成作業は、多くの時間と労力を取られます。
また、PCへのデータ入力が必要な場合、追加作業も発生します。余計な業務が増えると、作業員が巡回点検に充てる時間が減ったり、労働時間が長くなったりする可能性があります。
いきなりカメラやロボットを導入しても、点検項目そのものが整理されていなければ効果は限定的です。多くの現場では、過去のトラブルをきっかけに追加された項目が積み上がったまま、必要性が見直されていないケースが少なくありません。まずは現状の点検項目を棚卸しすることが、最も費用のかからない効率化になります。
この棚卸しによって工数の余裕を作り、その分を「自動化の導入準備」や「重要設備の重点監視」に振り向けるのが実務的な進め方です。
巡回点検の効率化にはさまざまな手段がありますが、自社の課題に合っていなければ費用に見合う効果は得られません。課題起点で選ぶための対応関係を整理しました。
| 現場の課題 | 有効な手段 | 効果の出方 |
|---|---|---|
| 記録・転記の手間が大きい | 点検アプリ(電子帳票) | 転記工数ゼロ、記録の検索が可能に。最も導入しやすい |
| 点検の頻度が足りず異常に気づけない | IoTセンサーによる常時監視 | 夜間・休日も含め24時間の状態把握が可能に |
| 巡回距離が長く時間がかかる | 遠隔監視カメラ、点検ルートの最適化 | 移動時間の削減。巡回回数そのものを削減できる |
| ガス漏れ・温度異常の特定に時間がかかる | 赤外線・超音波カメラ | 広範囲から異常箇所を素早く絞り込める |
| 危険区域・狭所の点検リスクが高い | 点検ロボット、ドローン | 危険作業からの解放。足場設置コストの削減 |
| 担当者による判断のばらつき | 判断基準の標準化、写真記録、閾値設定 | 誰が点検しても同じ結果に近づく |
| アナログ計器で数値の自動取得ができない | カメラ+AI読み取り(後付け) | 計器を交換せずに数値をデータ化できる |
古い設備で自動取得の対象にできるか判断が難しい場合は「古い設備をDX化するには?後付けIoTの進め方」を、投資判断の基準は「投資回収(ROI)の計算方法と削減のポイント」をご覧ください。
ガス漏洩や温度異常の箇所を特定するため、特殊カメラを導入する事で、巡回点検を効率化する事が可能です。
異常個所のおおよその位置をカメラで限定し、センサーで特定する手法を取る事で、異常の早期発見を実現します。
巡回点検で集めたデータは、バラバラに保管されていると活かしにくいのが実情です。IoTプラットフォームを導入すれば、振動・温度・電流などのデータを一元的に管理でき、過去との比較や傾向把握が容易になります。
検索性も高まり、欲しい情報をすぐに取り出せる環境が整います。さらにAIでデータを解析すれば、異常や予兆を早期に検知でき、点検精度の底上げにもつながります。システムの種類と選び方は「工場の設備管理に関するシステム」で整理しています。
ロボットを活用することで、遠隔で状態を監視でき、巡回時間の大幅削減が可能になります。
ロボットが点検を代替するようになれば、業務の省人化を実現できます。作業員は付加価値の高い業務に時間を充てられるため、労働時間の適正化にもつながるでしょう。
巡回点検の記録を電子化する第一歩については設備保全のペーパーレス化で終わらせない「真のDX」の進め方をご覧ください。
従来は点検記録を紙に書き、後でPCに入力し直す二度手間が発生していました。巡回点検アプリを導入すれば、スマートフォンやタブレットでその場で入力でき、報告もアプリで完結します。
手書き・転記作業がなくなることで、作業員の負担を減らしつつ、報告精度とスピードを両立できます。
効率化の効果を社内で示すには、導入前後の工数を数値で比較できる状態にしておく必要があります。最低限、次の指標を記録しておきましょう。
これらを導入前に1〜2か月記録しておくと、導入後の比較で「月あたり何時間削減できたか」を金額換算して示せます。あわせて、自動監視を導入する場合はアラートの誤報件数も記録し、運用が形骸化していないかを確認しましょう(→閾値設定とアラート疲れの防ぎ方)。
巡回点検の効率化は、単純に「最新技術を入れれば解決する」というものではありません。点検対象や現場環境、既存の管理体制に合わせて、段階的に導入することが成功の鍵となります。現場に必要な技術を見極めると同時に、導入コストと期待効果を比較し、経営的な投資対効果の観点から判断していきましょう。
第一実業では、メーカー中立の立場で複数技術を比較し、現場に合った対策の進め方を支援しています。
経済産業省の公開資料から、巡回点検業務にデジタル技術を活用した例を紹介します。
プラントの巡回点検はこれまで人手に依存しており、人手不足や危険作業のリスク、点検精度のばらつきが課題でした。 そこで導入が進んでいるのが自動巡回点検ロボットです。ロボットがセンサーやカメラで設備を監視し、取得したデータをAIで解析することで、人の経験に頼らない客観的な診断が可能になります。
その結果、危険作業からの解放による安全性向上、点検工数の削減による効率化、そして異常兆候の早期発見による突発停止の防止といった効果が期待できます。さらに蓄積データを活用すれば、予知保全や最適運転へと発展していきます。
これまで天井裏や貯留施設、煙突内部などの点検は、人が足場を組んで行う必要があり、時間やコストがかかるうえ、落下事故などの危険も大きな課題でした。
その課題に対応するのが、狭所空間特化型の点検ドローンです。手動操作型は赤外線カメラによって暗所や高温環境でも確認が可能となり、自動巡回型はSLAM技術を用いて設定ルートを自律飛行し、日常の巡回や緊急時の遠隔監視を実現します。
導入の効果として、危険作業をドローンに置き換えることで安全性が高まり、足場設置や移動にかかっていた工数とコストが削減されます。
さらに、取得データを活用することで異常の早期発見や設備停止リスクの低減にもつながり、点検プロセス全体の効率化と信頼性向上を実現します。
人手による巡回点検は、属人化や点検品質のばらつきを始め多くの課題があります。効率化・省人化を図るためには、AIやIoTなどのデジタル技術の活用が必要です。ただし、その前に点検項目の棚卸しを行い、何を自動化し何を人が担うのかを整理しておくことで、投資に見合う効果が得られます。
当サイトでは、設備保全のDX化を検討している方に向け、導入効果や進め方、活用例などをまとめています。設備保全DXの入門書として、ぜひお役立てください。
常務執行役員CSO
上野 雅敏さん
常務執行役員CSO
上野 雅敏さん
現場課題に沿った
設備保全DXを提案
総合機械商社の第一実業は、プラント・製造業分野で75年以上にわたり現場の設備導入と運用を支援※してきました。
石油・化学・製紙など重厚長大産業の設備を扱い続けてきたノウハウを基盤に、メーカー中立の立場から各種産業へ保全DXや予知保全など新しい取り組みを提案。理想論ではなく、現場に根ざしたリアルなDX提案を実現します。