設備保全DXに関する相談をする

TBMとCBMの違い

当メディアは第一実業株式会社をスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。

記事監修:第一実業株式会社(設備保全DX領域)/最終確認日:2026年7月23日

TBM(時間基準保全)とCBM(状態基準保全)は、どちらも「止めない現場」を目指すうえで欠かせない考え方ですが、判断基準が異なるため混同されがちです。本記事では両者の特徴と使い分けを整理し、予知保全に向けた次の一歩が見える状態をつくります。

TBM(時間基準保全)とは

TBM(時間基準保全)とは図解

一定周期で行う予防保全

TBMは、稼働時間やカレンダー日数など「時間」を基準にメンテナンスを実施する保全方式です。いわゆる予防保全の代表例で、たとえば「3カ月ごと」「2,000時間運転ごと」のように周期を決め、計画停止の中で整備・交換を行います。設備の劣化は見えにくい一方、周期を守ることで故障確率を下げ、現場のばらつきを抑えやすいのが特徴です。特に、点検手順が標準化されている設備や、停止計画を立てやすいラインで採用されやすく、「決めたタイミングで必ず手を入れる」運用で安定を狙います。

運用イメージ

典型例は、定期的な部品交換やオイル交換、給脂、ベルト張力の調整などです。たとえば減速機のオイルを半年ごとに交換する、シール材を年次停止で一括更新する、といった形で実施します。点検結果に関わらず作業が発生するため、予算化・要員計画は立てやすい反面、実際にはまだ使える部品まで交換してしまう「過剰保全」になりやすい点は押さえておきたいところです。

CBM(状態基準保全)とは

CBM(状態基準保全)とは図解

状態データを根拠に行う保全

CBMは、設備の状態(Condition)を示すデータを基準に、整備や部品交換の要否を判断する保全方式です。振動・温度・電流・圧力・潤滑油の状態などを継続的に見ながら、「いつ」「どこに」「どの程度の異常兆候が出ているか」を根拠に手を打ちます。TBMが時間で一律に実施するのに対し、CBMは「劣化のサインが出たら手を入れる」考え方で、不要な作業を減らしつつ、突発停止の芽を早期に摘むことを狙います。データを扱うため、DXの入口として語られることも多い方式です。

運用イメージ

たとえば回転機械に振動センサーを付け、特定周波数の増加や全体値の上昇を監視して軸受の劣化を検知する、モータの電流値から負荷変動を捉えて異常を疑う、といった運用が代表例です。温度上昇や潤滑油の金属粉検出など、設備に合った指標を選び、しきい値や傾向(トレンド)で判断します。最初は重要設備や停止影響の大きい工程から始め、段階的に対象を広げる進め方が現実的です。

時間基準保全(TBM)と状態基準保全(CBM)の違い

判断の起点は時間か状態か

TBMとCBMの最大の違いは、「実施判断の根拠」です。TBMはスケジュールに従って作業を行うため、設備の個体差や使われ方の違いがあっても、同じ周期で整備が回ります。一方CBMは、状態データに変化が出たときに対応するため、同じ設備でも負荷や環境によって実施タイミングが変わります。どちらが正しいというより、停止影響・劣化の見えやすさ・データの取りやすさで適用の向き不向きが分かれます。

コストの出方を比べる

費用面では、TBMは定期的に作業が発生するため「毎年ほぼ一定の保全費」にしやすい一方、過剰保全でコストが膨らむことがあります。CBMはセンサーや基盤、分析体制など初期費用がかかる反面、不要な交換を減らして長期的に最適化しやすいのが特徴です。停止損失まで含めた費用対効果の試算方法は「投資回収(ROI)の計算方法と削減のポイント」をご覧ください。

項目 TBM(時間基準) CBM(状態基準)
判断基準 カレンダー/稼働時間 振動・温度・電流など状態データ
実施タイミング あらかじめ決めた周期(計画停止に組み込む) 異常の兆候を検知したとき
コストの性質 定期的に発生(予算化しやすい) 初期投資+必要時に発生(最適化余地)
故障への強さ 周期外の突発には弱いことがある 兆候検知で未然防止しやすい
向いている設備 稼働条件が安定/法定点検が必要/劣化が見えにくい 停止影響が大きい/回転機器などデータに兆候が出る
必要な体制 点検手順の標準化、要員・部品の計画 データ取得の仕組み、閾値の設定・見直し

TBMとCBMそれぞれのメリット・デメリット

TBMの良い点と注意点

TBMのメリットは、計画性の高さです。停止計画に組み込みやすく、作業標準・部品手配・外注手配・予算管理まで一連で設計できます。現場の経験知が活きる反面、設備の実際の劣化状態と作業周期が合わないと、まだ使える部品を交換する過剰保全になりがちです。また、周期外で急激に劣化が進むケース(負荷変動、異物混入、潤滑不良など)では、定期整備の“隙間”に突発故障が起きるリスクも残ります。

  • メリット:計画停止に乗せやすい/予算と要員を見通せる
  • デメリット:過剰保全になりやすい/周期外の異常に気づきにくい

CBMの良い点と注意点

CBMのメリットは、部品寿命を最大限に活かしながら稼働を安定させやすい点です。状態データを根拠に「必要なときに必要な箇所だけ」手を入れられるため、交換部品と工数のムダを減らし、故障の予兆を捉えて計画停止につなげやすくなります。一方で、センサー・通信・データ蓄積の仕組みづくりに初期投資が必要で、しきい値設定や原因切り分けなどの分析スキルも求められます。最初から完璧を目指すより、重要設備から小さく始めて運用で磨く発想が現場に合います。

  • メリット:寿命を伸ばしやすい/兆候検知で停止リスクを下げやすい
  • デメリット:初期導入コスト/データの読み解き体制が必要

なお、CBMの運用でつまずきやすいのが閾値の設定です。感度を上げすぎると誤報が多発し、現場がアラートを信用しなくなります。具体的な設定・調整の進め方は「「センサー導入」で終わらせない設備保全のデータ活用と閾値設定方法」で解説しています。

「TBM」「CBM」と「RBM」「RCM」の違い

BM、RBM、RCM 図解

BMは故障後に対応する

BM(事後保全)は、故障が起きてから修理・交換する方式です。小型機器や停止影響が小さい設備では合理的ですが、主要ラインや安全・品質に影響する設備では、損失が大きくなりやすい点に注意が必要です。TBMやCBMは、BMの弱点である突発停止を減らすための発想と捉えると整理しやすくなります。

RBMはリスクで優先順位を決める

RBM(リスク基準保全)は、故障したときの影響度(安全・品質・生産・環境・コスト)と発生確率を踏まえ、保全の頻度や深さを決める考え方です。すべてをCBM化するのは現実的ではないため、リスクの高い設備から監視を厚くし、低リスク設備はTBMやBMで割り切る、といった使い分けに向きます。

RCMは最適な組み合わせを設計する

RCM(信頼性中心保全)は、設備が果たすべき機能を維持することを最優先に、TBM・CBM・BMなどを状況に応じて組み合わせる考え方です。「この設備は何が壊れると困るのか」「その兆候は何で見えるのか」を整理し、最小のコストで最大の信頼性を狙います。TBMとCBMの違いを押さえることは、RCM的な設計に進むための基礎になります。

保全方式の全体像を1枚で整理

ここまで登場した用語の関係を、判断の起点と位置づけで整理すると次のようになります。

略称 正式名称 判断の起点 体系上の位置づけ
BM Breakdown Maintenance
(事後保全)
故障の発生 最も基本的な方式。他方式はBMの弱点を補うもの
TBM Time Based Maintenance
(時間基準保全)
経過時間・稼働時間 予防保全の代表的手法
CBM Condition Based Maintenance
(状態基準保全)
状態を示すデータ 予防保全のうち、状態を根拠にする手法
PdM Predictive Maintenance
(予知保全・予兆保全)
データ分析による将来予測 CBMを分析で高度化した発展形
RBM Risk Based Maintenance
(リスク基準保全)
故障時の影響度×発生確率 どこにどの方式を適用するかを決める上位の考え方
RCM Reliability Centered Maintenance
(信頼性中心保全)
設備が果たすべき機能 各方式を組み合わせて全体設計する最上位の考え方

実務では、RBM/RCMの考え方で「どの設備に何を適用するか」を決め、個々の設備ではBM・TBM・CBM・PdMを使い分けるという二層構造で考えると整理しやすくなります。3方式それぞれのメリット・デメリットは「設備保全の種類─予兆保全(予知保全)・予防保全・事後保全の違い」で詳しく解説しています。

設備別の選定フロー(4ステップ)

「自社のこの設備はTBMかCBMか」を判断する際は、次の順序で確認すると迷いにくくなります。

STEP1:停止したときの影響を確認する

その設備が止まったとき、ライン全体が停止するのか、予備機で代替できるのかを確認します。影響が小さい設備は、無理にCBM化せずTBMやBMで割り切るほうが合理的です。

STEP2:法定点検の対象かを確認する

ボイラーやクレーンなど、法令で点検周期が定められている設備は、CBMを導入していても法定点検(TBM)は必須です。この場合は「法定点検+状態監視」の併用になります。

STEP3:故障モードに予兆が出るかを確認する

過去の故障履歴を振り返り、劣化・摩耗が主な原因なのか、突発的な故障が主なのかを確認します。前者であればCBMの効果が出やすく、後者は兆候が捉えにくいためTBMと予備品確保で備えるほうが現実的です。設備ごとの故障モードは「設備別に見る故障原因と効率的なメンテナンス方法」で整理しています。

STEP4:データが取得できるかを確認する

センサーを設置できる面があるか、電源や電波が確保できるかを確認します。古い設備でも後付けできるケースは多いため、「古いから無理」と判断する前に確認することをおすすめします。

TBMからCBMへ移行する実務手順

すでにTBMで運用している設備をCBMへ寄せていく場合、いきなり定期点検をやめるのではなく、次の順序で移行すると安全です。

  1. 現在の点検項目を棚卸しする:どの項目が「数値で測れるもの」で、どれが「五感による判断」かを分類します
  2. 数値化できる項目にセンサーを設置する:まずは停止影響の大きい1台から始めます
  3. TBMとCBMを並行運用する:定期点検は継続したまま、センサーデータも取得します。この期間に「定期点検の結果」と「データの傾向」を突き合わせます
  4. 正常範囲を把握し閾値を設定する:一定期間のデータからその設備固有の正常範囲を割り出します
  5. 実績を検証してから周期を見直す:データで状態を把握できると確認できた項目について、点検周期を延長または状態基準へ切り替えます
  6. 他設備へ横展開する:得られた知見をもとに対象を広げます

並行運用の期間を設けることが、移行を安全に進めるポイントです。「データで見られるようになったから定期点検をやめる」判断は、実績で裏付けが取れてから行いましょう。1台からの始め方は「失敗しない予兆保全の始め方 ポンプ1台からの「スモールスタート」が成功する理由」で解説しています。

予知保全へつなげる第一歩に

TBMは時間基準で計画的に進めやすく、CBMは状態データを根拠に無駄を減らしやすい手法です。どちらが優れているかではなく、設備の重要度や停止影響に合わせて使い分けることがポイントになります。

まずは「止まると困る設備」と「劣化のサインが取りやすい設備」を整理し、TBMで回している点検項目のうち、データ化できるものからCBMへ段階的に寄せていきましょう。小さく始めて運用で磨くほど、突発停止の抑制につながります。

CBMの考え方は、将来的な予兆検知やスマート保安、DX推進の土台になります。保全全体の整理や、次に読むべきコンテンツを探したい方は、下記のTOPページから関連情報をご覧ください。