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ここでは、工場の設備が故障する原因や、効率的なメンテナンスのポイントを紹介します。あわせて、設備ごとにどのデータを取得すれば異常の兆候を捉えられるのかを一覧で整理しました。
設備故障には大きく分けて6種類あります。
部品や設備自体の経年劣化によって生じる故障です。時間とともに部品・設備の劣化が進み、正常に使用できなくなる状態をいいます。劣化故障は未然に防ぎやすく、定期点検や予防保全によって発生リスクを抑えられます。
使用している最中に突然発生する故障をいいます。不具合や異常の兆候がなく、突如発生するケースも見られます。突発故障は予知が困難ですが、定期点検やメンテナンスにより発生リスクを低減できます。
部品の摩耗や金属疲労、劣化などによって生じる故障です。特に駆動部で起こりやすく、導入から時間が経過している設備ほど発生リスクが高くなります。摩耗故障が発生した場合、部品の交換や設備の更新が必要です。
設備導入から間もない段階で発生する故障のことです。設備の設計ミスや部品の不良、設置環境の不適合を始め、原因は多岐にわたります。初期故障が発生した場合、メーカーに調査や修理を依頼する必要があります。
断続的に機能回復と故障が発生する状態をいいます。一時的な現象で終わる場合もあれば、不定期に何度も繰り返される場合もあります。間欠故障は予測が困難なため、設備全体の精密点検が求められます。
ランダムに発生する故障のことです。初期故障と摩耗故障の間に生じることがあります。偶発故障の原因はさまざまで、予測も難しいのが実情です。ただし、日常的な予防保全や定期点検で発生リスクを抑えられます。
すべての故障を同じ方法で防ぐことはできません。故障の性質によって、有効な保全方式が異なります。自社設備の故障傾向を振り返り、どの方式で対処すべきかを整理しておくと、投資対象を絞り込みやすくなります。
| 故障の種類 | 予兆の現れ方 | 有効な保全方式 |
|---|---|---|
| 劣化故障 | 徐々に進行し、データに傾向として現れる | CBM(状態基準保全)・予知保全が有効 |
| 摩耗故障 | 振動・音の変化として現れやすい | CBM・予知保全が最も効果的 |
| 突発故障 | 兆候が現れにくい | TBM(定期点検)+予備品の確保で影響を最小化 |
| 間欠故障 | 不定期に現れ、点検時には再現しないことが多い | 常時監視によるデータ記録で発生条件を特定 |
| 初期故障 | 導入直後に集中して発生 | 試運転時の重点監視・メーカー対応 |
| 偶発故障 | ランダムで予測困難 | TBM(日常点検・予防保全)でリスクを低減 |
保全方式そのものの違いは「設備保全の種類─予兆保全(予知保全)・予防保全・事後保全の違い」で、時間基準(TBM)と状態基準(CBM)の使い分けは「TBMとCBMの違い」で詳しく解説しています。
設備保全DXで最初に迷うのが「どの設備に、どのセンサーを付ければよいか」です。主要設備の代表的な故障モードと、その兆候を捉えるために取得すべきデータを整理しました。
| 設備 | 主な故障モード | 初期症状 | 取得すべきデータ | 保全アクション |
|---|---|---|---|---|
| モーター | ベアリング摩耗、絶縁劣化、過負荷 | 振動増加、温度上昇、電流値の変動 | 振動(加速度)、温度、電流 | ベアリング交換、絶縁抵抗測定、負荷条件の見直し |
| コンプレッサー | フィルター詰まり、潤滑油不足、異物混入 | 吐出圧の低下、温度上昇、消費電力の増加 | 圧力、温度、電流、稼働時間 | フィルター清掃・交換、注油、ドレン処理 |
| プレス機 | 部品摩耗・破損、油圧ポンプ不具合、潤滑不足 | 油圧の変動、動作音の変化、加圧力のばらつき | 油圧、電流、振動、ストローク回数 | 油圧系点検、部品交換、給油量の調整 |
| ポンプ | ベアリング摩耗、シール劣化、キャビテーション、エア噛み | 振動・異音の増加、流量低下、漏れ | 振動、流量、圧力(吸込・吐出)、温度 | シール・ベアリング交換、吸込条件の改善 |
| ボールねじ | 潤滑不足・劣化、異物混入、取付不良、熱膨張 | 摩擦音、位置決め精度の低下、温度上昇 | 振動、温度、モーター電流(負荷) | 給脂、シール・カバー点検、芯出し確認 |
いずれの設備でも、共通して有効なのが振動・温度・電流の3点です。これらは既存設備に後付けで取得できるため、大規模な改造や設備更新を伴わずに監視を始められます。後付けセンサーの選び方や制約条件は「後付けセンサーで古い機械のIoT化=レトロフィットの実現方法」で解説しています。
モーターが故障する原因は、ベアリングの異常や不具合、絶縁材の性能低下が挙げられます。繰り返し稼働させた結果、強い負荷がかかって故障する場合もあります。モーターの故障を防止する効果的な手段は、定期点検と予防保全です。特に予防保全は重要性が高く、劣化故障や摩耗故障、偶発故障のリスクを低減できます。
データで兆候を捉える場合は、振動の加速度成分(ベアリングの初期損傷)と電流値の変動(過負荷)が有効な指標になります。
コンプレッサーが故障する主な原因は、高温・低温など環境要因や異物混入です。部品の摩耗や、潤滑油不足によって故障するケースも見られます。故障を防ぐためには、定期点検によるフィルター清掃や潤滑油の注油が必要です。ただし突発故障のリスクがあるため、リアルタイムな監視や予防保全を取り入れることも求められます。
監視の指標としては、吐出圧の低下と消費電力(電流)の上昇が組み合わせで確認できると、フィルター詰まりや効率低下を早期に把握しやすくなります。
プレス機の故障原因は、部品の摩耗や破損、油圧ポンプの不具合など多岐にわたります。また、潤滑油不足による故障にも注意が必要です。プレス機のトラブルを防ぐためには、定期点検と部品の交換、注油が求められます。資金に余裕があれば故障検知システムを取り入れ、異常の兆候を検出できる仕組みを作るとよいでしょう。
プレス機はストローク回数(稼働履歴)と油圧・電流の推移を併せて記録すると、部品の交換時期を稼働実績ベースで判断しやすくなります。
ポンプが故障する主な原因は、ベアリングの摩耗や破損、シールの劣化です。内部で気泡が生じるキャビテーションや、空気が滞留するエア噛みが故障を引き起こす場合もあります。ポンプの故障は、外観や消耗部品の定期点検によってリスクを抑えられます。ただし、台数が多いと点検に時間を要するため、計画的に行う必要があります。
台数が多く点検が追いつかない場合は、まず停止時の影響が最も大きい1台に振動センサーを後付けし、効果を検証してから対象を広げる進め方が現実的です。詳しくは「失敗しない予兆保全の始め方 ポンプ1台からの「スモールスタート」が成功する理由」をご覧ください。
ボールねじの故障原因には、潤滑油不足や劣化、粉塵などの異物混入が挙げられます。部品の取り付け不良や、ねじ軸の熱膨張によって故障が引き起こされるケースもあります。ボールねじの故障を防ぐポイントは、こまめな点検と予防保全です。予防保全は異常の早期発見に繋がるため、ボールねじに多い劣化故障や摩耗故障を抑止できます。
加工精度に直結する部位のため、位置決め精度の変化とモーター電流(負荷の増加)を併せて確認すると、潤滑不良や異物混入の兆候を捉えやすくなります。
上記の一覧で取得すべきデータが分かっても、いきなり全設備の監視を始める必要はありません。次の順序で段階的に進めるのが実務的です。
予兆保全の全体像とメリット・デメリットは「予兆保全(予知保全)とは?知っておきたい基礎知識」で、導入の具体的な流れは「予兆保全(予知保全)を導入する際の流れ」で解説しています。