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複数メーカーの設備や部署ごとのIoTツールが混在する工場では、データが集まっていても、保全判断に活用しきれないケースがあります。この記事では、設備保全システムの役割を整理し、既存システムを残しながらデータの分断を減らす進め方を解説します。
設備保全DXを進めるために、各部署が個別にIoTツールや監視システムを導入した結果、かえってデータ活用が難しくなることがあります。例えば、生産ラインごとに画面が違う、設備メーカーごとに管理ソフトが違う、保全記録と稼働データが別々に保存されている、といった状態です。
このように、部門やシステムごとにデータが分断されている状態を「サイロ化」と呼びます。現場ではデータを確認するたびに複数の画面を開く必要があり、異常の原因を調べるにも時間がかかります。設備保全DXでは、まずバラバラに存在するデータをどうつなぐかを考えることが重要です。
工場では、長年の設備更新やライン増設により、複数メーカーの機械が混在していることが一般的です。設備ごとに通信方式やデータ形式が異なり、さらにベンダー独自の管理画面やクラウドサービスが使われていると、全体を横断して状況を見ることが難しくなります。
この状態では、保全担当者が設備ごとにログイン先を切り替えたり、CSVを手作業で集計したりする必要が出てきます。結果として、IoT化したはずなのに現場の負担が減らず、データ確認そのものが作業になってしまいます。複数ベンダー環境では、個別最適ではなく工場全体でデータを扱う視点が欠かせません。
データ連携を検討する前に、工場で使われる主要なシステムが「それぞれ何を担当しているのか」を整理しておくと、どこをどうつなぐべきかが見えやすくなります。役割が重なる部分・すみ分ける部分を把握することが、過不足のない構成づくりの第一歩です。
| システム | 主な役割 | 設備保全DXでの位置づけ |
|---|---|---|
| CMMS(設備保全管理システム) | 点検計画・作業指示・保全履歴・予備品の管理 | 保全業務の司令塔。保全データの集約先になる |
| EAM(設備資産管理) | 設備を「資産」として捉えたライフサイクル・コスト管理 | CMMSを含むより広い資産管理。更新投資判断に活用 |
| IoT監視・遠隔監視 | 振動・温度・電流などの稼働データをリアルタイム取得 | 予兆検知の入力データを供給する層 |
| SCADA | 設備・プラントの監視制御(現場のオペレーション) | 制御系(OT)の中核。稼働状態の一次データ源 |
| MES(製造実行システム) | 生産の実行管理(実績・進捗・品質) | 停止と生産・品質を結びつける層 |
| ERP(基幹システム) | 会計・在庫・購買など経営資源の管理 | 保全コスト・予備品在庫を経営数値と接続する層 |
| BIツール | 集約データの可視化・分析・レポート | KPI(MTBF/MTTR等)を経営・現場に見せる層 |
設備保全DXの中心になるのはCMMSとIoT監視です。CMMSの機能や導入で解決できる課題は「設備保全管理システム(CMMS)とは?」で、システム全体の種類と選び方は「工場の設備管理に関するシステム」で解説しています。すべてを一度に連携させる必要はなく、自社の課題に直結する層から段階的につないでいくのが現実的です。
以下は、既存の設備管理システムやDCSを運用している製造現場に対し、第一実業が整理した設備保全DXの提案内容を一般化したものです。導入済みのシステムや効果を示す事例ではなく、導入前の構成検討例です。

紙、PDF、ローカルフォルダに分散した点検・故障記録を、設備ID、発生日、部位、症状、対応内容などの項目に整理します。提案ではAI-OCRやLLMを使った構造化も候補となりましたが、読み取り・分類結果には誤りが含まれる可能性があるため、重要項目の照合と承認方法が必要です。
過去データを整えるだけでは、日々の記録が再び紙や個人ファイルへ戻るおそれがあります。そこで、現場の声を反映した入力画面、選択式の項目、写真添付などにより、既存業務を大きく変えずに記録を続けられる仕組みを検討します。紙・Excel・システムへの二重入力を減らせるかは、承認や帳票出力を含む業務全体で確認します。
DCSが持つ温度・圧力・流量などの時系列データと、点検・故障・修繕記録を同じ時間軸で確認できれば、「設備状態が変化した時期」と「現場で異常対応した時期」を比較しやすくなります。そのうえで相関分析や知見の検索を行い、簡易的な予兆検知や類似事例の提示を検討します。
ただし、相関が見つかったことだけで故障原因を特定できるとは限りません。設備の専門知識、運転条件、保全履歴をあわせて評価し、AIによる提案は担当者の判断を補助する情報として扱います。
| 確認項目 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 利用目的 | 監視、原因調査、保全計画、原価管理など、連携後に行う判断を定義する |
| データ仕様 | 設備ID、単位、時刻、取得周期、欠損、時刻同期の方法を確認する |
| 接続範囲 | 読み取り専用か書き込みを伴うか、OT側へ影響する変更があるかを確認する |
| 権限・機密性 | 担当者名や原価情報を含む場合の閲覧権限、保存先、委託先の責任を決める |
| 異常時対応 | 通信断、誤表示、アラート見逃し時の代替手順と責任者を決める |
システムの分断を減らすには、既存の設備やツールをすべて置き換えるのではなく、目的に必要なデータを連携できる状態に整える方法があります。すでに導入済みのIoTツールや保全システムを活かしながら、データを共通の場所に集約できれば、工場全体の状態を確認しやすくなります。
そのためには、各システムからどのデータを取り出せるのか、どの頻度で必要なのか、誰がどの画面で確認するのかを整理することが出発点です。連携の目的が曖昧なまま統合を進めると、必要以上に大きなシステムになり、かえって使いづらくなるおそれがあります。
クラウド型のIoTツールや保全管理システムを使っている場合、API連携によってデータを統合できるケースがあります。APIとは、異なるシステム同士がデータをやり取りするための接続口のようなものです。例えば、設備の稼働データ、アラート履歴、点検結果などを別の管理画面に集約できます。
API連携のメリットは、既存システムを残したままデータを活用しやすい点です。現場が使い慣れたツールを急に廃止する必要がなく、必要な情報だけを上位システムに集められます。特に複数拠点や複数ラインを管理する場合は、クラウド上で横断的にデータを見られる仕組みを整えることで、保全判断のスピード向上につながります。
APIが提供されていても、取得できる項目、呼び出し回数、データ保存、認証方式には制約があります。また、DCS・SCADAなど制御系との接続変更は、安全性とサイバーセキュリティへの影響を事前に評価し、設備メーカー、システム管理者、安全・法務部門を含めて判断してください。OTネットワーク防御については安全に工場IoTを進めるためのサイバー攻撃対策とOT網の防御をご覧ください。
設備から直接データを取得する場合は、通信規格の選定もポイントになります。工場ではメーカーや年代の異なる機械が混在しているため、特定ベンダーの独自仕様だけに依存すると、将来的な拡張や他システムとの連携が難しくなることがあります。
そこで注目されるのが、OPC-UAのようなオープンな通信規格です。OPC-UAは、産業機器やシステム間でデータをやり取りするための標準的な考え方の一つで、異なるメーカーの設備データを扱いやすくするために活用されます。すべての設備で即時対応できるとは限りませんが、将来の拡張性を考えたデータ連携を進めるうえで検討したい選択肢です。
システムのサイロ化を解決しようとすると、「すべてを一つの大きなシステムにまとめるべき」と考えがちです。しかし、複数ベンダーの機械や部署ごとのツールがすでに動いている工場では、全面刷新に大きなコストと時間がかかります。さらに、現場の操作方法が一気に変わることで混乱が生じる可能性もあります。
現実的なのは、既存システムを活かしながら、それらをつなぐデータ連携基盤を設ける方法です。各設備やツールから必要なデータを集め、同じ時間軸で確認できるようにすれば、個別の画面を行き来しなくても異常の傾向を把握しやすくなります。すべてを置き換えるのではなく、つないで活かすことが、工場全体の設備保全DXを進める鍵になります。
工場IoTの導入が進むほど、システムやデータがバラバラに増えてしまうことがあります。重要なのは、新しいシステムを増やすことではなく、既存のデータを保全判断に使える形へ整理することです。まずは、どの設備・部署・ツールにどのデータがあるのかを棚卸ししましょう。
そのうえで、API連携やオープンな通信規格、データ連携基盤を活用し、必要な情報を横断的に見られる状態を目指します。複数メーカーの設備が混在している場合も、段階的に連携範囲を広げることで、データの分断を減らしながら設備保全DXを進められる可能性があります。
ハブでつないで活かす
上野 雅敏さん
常務執行役員CSO
上野 雅敏さん
異なるメーカーの機械が混在し、部署ごとに別々のツールが乱立している環境は、多くの工場が直面する典型的な『使いにくいビッグデータ』の課題です。これを一気に一つの巨大システムへ統合しようとすると、現場の混乱と莫大なコストがかかり続けます。まずは、既存のバラバラなツールやシステムをそのまま活かしつつ、それらを繋ぐ『ハブ(データ連携基盤)』を構築することから始めましょう。
第一実業では、各機器の時系列データや点検記録を一元的に集約し、相関分析を行えるクラウドパッケージの活用など、現場に負担をかけない柔軟なプラットフォーム設計をご提案しています。
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