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古い設備をDX化するには?後付けIoTの進め方

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目次
記事監修:第一実業株式会社(設備保全DX領域)/最終確認日:2026年7月23日

古い設備を使い続ける工場では、「設備保全DXを進めたいが、機械が古くて対応できないのでは」と悩むケースが少なくありません。この記事では、レガシー設備を買い替えずに後付けIoTでデータ化する考え方と、現場で進める際のポイントを解説します。

なお本ページでは、実際に導入を進めるための手順や現場調整の実務を中心に扱います。センサーで何が取得できるのか、どのような制約があるのかといった技術的な前提は「後付けセンサーで古い機械のIoT化=レトロフィットの実現方法」で解説しています。

なぜ工場は「古い設備」のDX化でつまずくのか?

設立から数十年が経過した工場では、生産設備そのものはまだ動いていても、データ取得や遠隔監視を前提に作られていないことが多くあります。設備保全DXを進めようとしても、現場からは「この機械は古すぎて無理ではないか」「メーカーのサポートが終了している」といった声が上がりがちです。

しかし、DX化の目的は必ずしも最新設備への更新ではありません。まずは、故障の前兆や稼働状態を把握し、経験や勘に頼っていた保全判断をデータで補うことが出発点になります。古い機械ほど突発停止の影響が大きいため、段階的な見える化に取り組む価値があります。

「PLCがない」「図面がない」設備の壁

古い設備のDX化でよくある課題が、PLCや通信機能が備わっていないことです。PLCとは、機械の動きを制御する装置のことで、近年の設備ではここから稼働データを取得できる場合があります。一方、古い設備では制御盤がアナログ中心だったり、そもそも外部システムとつなぐ設計になっていなかったりします。

さらに、長年の改造や担当者の退職により、電気図面や配線図が残っていないケースもあります。この状態で無理に内部信号を取り出そうとすると、設備停止や安全面のリスクが高まります。そのため、まずは機械本体に手を入れず、外側から状態を把握する方法を検討することが現実的です。

「DX=設備の買い替え」という誤解と投資コストへの懸念

設備保全DXという言葉を聞くと、「古い機械をすべて新しい設備に置き換える必要がある」と考えてしまう担当者もいます。しかし、設備更新には多額の投資が必要で、工場のレイアウト変更や生産停止期間の確保も発生します。特に、まだ使える機械を更新する判断は簡単ではありません。

そこで選択肢になるのが、既存設備を活かしながらデータ取得の仕組みを追加する考え方です。全設備を一気に更新するのではなく、停止時の影響が大きい設備や、故障頻度の高い設備から優先して取り組めば、限られた予算でもDX化を始めやすくなります。老朽化設備を「更新するか、延命して監視するか」の判断軸は「老朽化した設備の管理と更新」でも解説しています。

古い機械を買い替えずにDX化する「レトロフィット」

レトロフィットとは、既存設備に後から機能を追加し、性能や管理性を高める考え方です。設備保全DXの分野では、古い機械にセンサーやカメラを後付けし、稼働状態や異常の兆候をデータとして取得する取り組みを指します。

ポイントは、設備を大きく改造しないことです。機械の制御系に直接手を加えず、外付けの機器で情報を集める方法であれば、古い設備やメーカー保守が終了したレガシー設備でも導入を検討しやすくなります。まずは小さく試し、効果を確認しながら対象設備を広げる進め方が向いています。

アナログ計器のカメラ読み取り(AI OCR)

古い設備では、温度計・圧力計・流量計などがアナログメーターのまま使われていることがあります。これまでは作業員が巡回し、目視で数値を読み取って点検表に記入していた現場も多いでしょう。この作業を効率化する方法の一つが、カメラとAI OCRを使った読み取りです。

AI OCRは、画像から文字や数値を読み取る技術です。メーターの前にカメラを設置し、定期的に撮影した画像から針の位置や数値を読み取ることで、人手による記録作業を減らしながら、点検データを時系列で蓄積できます。既存計器を交換しなくても始めやすい点が特徴です。

外付けIoTセンサー(振動・温度)による後付けデータ収集

モーター、ポンプ、コンプレッサー、ファンなどの回転機器では、振動や温度の変化が不具合の兆候として現れることがあります。外付けIoTセンサーを取り付ければ、設備内部の制御信号を取り出さなくても、運転状態の変化を把握しやすくなります。

例えば、軸受の劣化によって振動が大きくなる、冷却不良によって温度が上がるといった変化を継続的に記録できます。点検時だけの一時的な確認ではなく、日々の変化を追えるため、「いつもと違う状態」に早く気づく仕組みを作れます。配線工事を抑えたい場合は、無線式センサーの活用も選択肢になります。

【実践編】後付けIoT導入の5ステップ

ここからは、実際に後付けIoTを導入する際の進め方を順を追って説明します。工場の生産計画への影響を抑えながら、着実に効果を出すための手順です。

STEP1:対象設備を1台選ぶ

最初から複数設備を対象にすると、費用も現場の負担も大きくなり、効果検証も曖昧になります。まずは1台に絞り、そこで得た知見を横展開する形が定石です。選定の優先順位は次項で解説します。

STEP2:取得するデータと目的を決める

「何の異常を、どれくらい前に知りたいのか」を先に決めます。ここが曖昧なままセンサーを選ぶと、後から「見たかったデータが取れていない」という事態になります。例えば「ベアリング劣化を数週間前に把握したい」なら振動(加速度)、「過負荷・空転を防ぎたい」なら電流、といった対応関係で選びます。

STEP3:現地調査を行う

設置面の材質・スペース、電源の有無、電波状況、環境条件(温度・粉塵・油・水)を確認します。ここで確認漏れがあると、設置当日に作業が止まったり、取得データの精度が出なかったりします。具体的な確認項目は後述のチェックリストを参照してください。

STEP4:設置と学習期間の確保

クランプ式の電流センサー、マグネット式の振動センサー、カメラなどは、基本的に設備を止めずに設置できます。設置後すぐに閾値を設定するのではなく、一定期間は通常稼働のデータを蓄積する「学習期間」を設けます。この期間に、その設備固有の正常範囲を把握します。

STEP5:閾値設定・運用開始と効果検証

蓄積したデータから正常範囲を割り出し、緩めの基準から運用を開始します。アラートが鳴ったら実機を確認し、「真の異常か誤報か」を記録して基準を調整していきます。並行して、点検工数や停止回数の変化を記録し、次の設備へ展開するかを判断します。

PoCの成功基準・中止基準の決め方は「失敗しない予兆保全の始め方 ポンプ1台からの「スモールスタート」が成功する理由」で、閾値の調整方法は「「センサー導入」で終わらせない設備保全のデータ活用と閾値設定方法」で詳しく解説しています。

対象設備を選ぶ優先順位の付け方

「どの設備から始めるか」は、投資効果を大きく左右します。次の観点で点数化して比較すると、社内でも合意が取りやすくなります。

評価の観点 優先度が高い設備の条件
停止時の影響 止まるとライン全体が停止する。1回の停止損失額が大きい
故障の頻度 過去1〜2年で繰り返し停止している
故障の性質 劣化・摩耗など、徐々に進行する故障が多い(データに兆候が出る)
点検の負荷 点検頻度が高い、または点検場所が遠い・危険
属人化の度合い 特定のベテランしか異常を判断できない
設置の容易さ センサーを取り付けやすい構造・環境である
更新予定 近い将来の更新・廃棄予定がない(あるなら優先度を下げる)

特に重要なのは「停止時の影響」と「故障の性質」の2点です。停止しても影響が小さい設備や、兆候が現れない突発故障が主体の設備を選んでしまうと、投資に見合う効果が出にくくなります。効果を金額で試算する方法は「投資回収(ROI)の計算方法と削減のポイント」をご覧ください。

現地調査で確認すべきチェックリスト

設置当日に手戻りを起こさないため、事前の現地調査で以下を確認します。

設置環境

  • センサーを取り付ける面の材質(マグネットが使えるか)と平滑さ
  • 設置スペースの有無(可動部・高温部との干渉がないか)
  • 周囲の環境条件:温度、粉塵、油、水、洗浄の有無
  • 周囲の外乱:隣接設備の振動、フォークリフトの通行など

電源・通信

  • センサー・通信機器用の電源が確保できるか(電池式にするか)
  • 設置場所の電波状況(金属壁・配管による遮蔽の有無)
  • 中継器の設置が必要か、その電源をどうするか
  • クラウドへの通信方式(無線/モバイル回線/有線)と社内ネットワーク方針

安全・契約面

  • センサー設置がメーカー保証や保守契約に影響しないか
  • 防爆エリアなど、機器仕様に制約がある区域かどうか
  • 高電圧部への作業に資格が必要かどうか
  • 取得データをCSV等で自社に取り出せるか(将来の他システム連携のため)

運用体制

  • アラートを誰が受け取り、誰が一次確認するか
  • 夜間・休日の連絡ルートが決まっているか
  • 異常を検知した後に対応できる部品在庫・要員があるか

最後の「検知後に対応できる体制があるか」は見落としやすい点です。予兆を検知できても手を打てなければ効果は出ないため、導入と並行して対応フローも整えておきましょう。

センサーをつけるだけでは意味がない!真のレガシーDXとは

古い機械への後付けIoTは、設備保全DXの入口として有効です。ただし、センサーを設置してデータを集めるだけでは、現場の保全活動は大きく変わりません。温度や振動の数値が見えるようになっても、それが「異常なのか」「点検すべきなのか」「いつ止めるべきなのか」が判断できなければ、アラートが増えるだけになってしまいます。

レガシー設備のDX化では、センサーデータと現場の記録を結びつけることが欠かせません。例えば、過去の故障履歴、部品交換のタイミング、点検時の気づき、チョコ停の発生記録などを同じ時間軸で見れば、異常値と実際のトラブルの関係を検討しやすくなります。データを現場判断に使える形へ整えることが、真の設備保全DXにつながります。こうした記録の一元管理には設備保全管理システムが有効です(→設備保全管理システム(CMMS)とは?)。

古い設備でも後付けIoTで
DX化の第一歩を踏み出せる
取締役 常務執行役員CSO 上野 雅敏さん
取締役 常務執行役員CSO
上野 雅敏さん
取締役 常務執行役員CSO 上野 雅敏さん
取締役
常務執行役員CSO
上野 雅敏さん
記事監修:第一実業

「古い設備だからDXは無理!」と考える必要はありません。設置から20~30年の機械であっても、温度や振動を計測するセンサーを後付け設置すれば、十分に貴重な稼働データを集められます。

ただし、重要なのは『センサーを付けること』自体ではなく、『集めたデータをどう現場の判断に活かすか』です。第一実業では、センサーから得られる時系列データ(温度・圧力等)と、現場の点検・故障記録(イベントデータ)を同じ時間軸で統合・解析するアプローチを推奨しています。既存アセット(資産)を最大限に活かすことで、突発停止を抑える高精度な予知保全の第一歩を、低投資で確立することができます。

古い設備は後付けIoTで段階的にDX化できる

レガシー設備をDX化する際は、対象設備を絞り、取得したいデータを明確にすることから始めましょう。「止まると困る設備」「故障原因がつかみにくい設備」「点検作業が属人化している設備」などを優先すると、導入後の効果を検証しやすくなります。

古い設備を無理に新しくするのではなく、既存アセットを活かしながら保全の質を高める。その考え方が、設備更新の予算に限りがある工場にとって、現実的な設備保全DXの進め方です。

センサーで取得できるデータの種類や、設置時の技術的な制約条件については、以下のページで詳しく解説しています。