当メディアは第一実業株式会社をスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。
設備保全の現場では、人手不足や属人化、突発的なトラブル対応など、さまざまな課題が表面化しています。これらの課題を解決する手段として注目されているのが、センサーやネットワークを活用して設備の状態を常時把握するIoT技術です。
IoTを活用した設備保全では、設備の稼働データをリアルタイムで取得・分析し、異常の兆候を早期に検知することが可能になります。これにより、従来の「経験と勘」に頼った保全から、データに基づく計画的な運用へとシフトできます。
本記事では、IoTを取り入れた保全の仕組みや導入のメリット、実際の活用事例を交えながら、今後の設備保全の方向性をわかりやすく解説します。
設備保全の現場では、人手不足や属人化、コストの増加、ヒューマンエラーなど、複数の課題が重なって発生しています。これらは単独の問題ではなく、相互に影響し合いながら現場の負担を大きくしています。
保全担当者の経験や勘に依存した作業が多い現場では、点検品質にばらつきが生まれやすく、教育・引き継ぎにも時間がかかります。また、熟練者の退職や人員不足が続くことで、保全体制全体のリスクが高まる傾向にあります。
さらに、突発的な故障や過剰なメンテナンスによって保全コストが増大し、経営面でも課題となっています。こうした課題を根本から解消するには、人に依存する保全体制から脱却し、データを活用した仕組みづくりへ移行することが求められます。
保全担当者の数が限られている現場では、点検や修理の品質が一人ひとりのスキルや経験に依存しやすくなります。その結果、業務が属人化し、特定の担当者しか対応できない工程が生まれやすくなります。
属人化した状態が続くと、スキルやノウハウが十分に共有されず、作業効率や判断の精度にばらつきが生じます。さらに、担当者の休職・退職時には業務が停滞し、突発トラブルへの対応が遅れるなど、現場全体のリスクにつながります。
人手不足が慢性化する今、こうしたリスクを防ぐには、知識や手順をシステムで標準化し、個人依存を減らす仕組みづくりが欠かせません。データ共有や作業履歴の可視化によって、属人化を抑えた安定的な保全体制を実現できます。
保全業務は人手に依存する作業が多く、担当者の技術力や経験によって効率が大きく変わります。そのため、熟練者に頼りきりの現場では業務負荷が集中し、人件費の上昇や教育コストの増加につながりやすくなります。
また、保全担当者の育成には時間がかかり、教育のたびに現場リソースが割かれます。人材を確保しても、作業の引き継ぎや技術伝承がうまく進まないと、教育コストや人件費がさらに膨らむという悪循環に陥りかねません。
さらに、定期点検やメンテナンスには常に人件費が発生し、故障時には部品交換や修理に追加費用がかかります。こうしたコストを抑えるには、作業記録や稼働データをもとに保全頻度を最適化し、必要な作業を必要なタイミングで行う仕組みへの移行が求められます。
点検や修理を人の手で行う保全業務では、どうしてもヒューマンエラーのリスクが発生します。設備の異常を早期に発見できる一方で、確認漏れや判断ミスによって不具合を見落とす可能性を完全に排除することはできません。
特に、複雑な設備や微細な変化を伴う装置では、熟練者でもわずかな異常を見落とすことがあります。記録の誤記入や報告漏れが重なると、異常の兆候をつかむタイミングを逃し、結果的に突発的な故障につながるリスクが高まります。
ヒューマンエラーを防ぐためには、IoTによる状態監視やデータの自動記録など、人に依存しない検知体制を整えることが有効です。データに基づく判断を取り入れることで、保全品質の安定化とトラブルの未然防止が期待できます。
設備にセンサーや通信機器を取り付け、稼働データを常時取得・分析することで、保全業務は大きく変わります。IoTを活用すると、次のような効果が得られます。
経済産業省では、製造業におけるDX推進の一環として、IoTやAIを活用した設備保全の事例を多数紹介しています。これらの事例からは、データ活用による安定稼働や人手不足の解消、省人化と安全性向上の両立といった効果が共通して見られます。
以下では、経産省が公開している実際の事例から、IoT技術を活かした設備保全の具体的な取り組みを紹介します。
24時間体制で運転監視・操作を行うプラントでは、熟練運転員の高齢化や人員不足により、運転ノウハウの継承が難しくなる課題がありました。とくに、変数が多く制御が複雑な蒸留工程や化学プロセスでは、経験に基づく判断が不可欠で、属人化が進むリスクが高まっていました。
プラント内の温度・圧力・流量など約1,500種類のセンサーデータをAIが常時監視し、リアルタイムに最適なバルブ操作を判断。運転員はAIの推奨操作を確認しながら制御を行う半自動運転体制を構築しました。これにより、人的要因による操作ミスを削減するとともに、省人化と安定操業の両立を実現しています。
導入後は、従来2名体制で行っていた運転監視を1名+AIで代替できるようになり、トラブル発生率の低下と運転リソースの最適化を達成。余剰リソースを点検業務へ再配分することで、現場巡回の頻度を高め、設備信頼性の向上にもつながりました。
この取り組みは、ノウハウのデータ化とAI活用による「運転判断の標準化」を実現した好例です。人の経験をAIが補完することで、熟練者に依存しない操業体制の確立と、パンデミックなどの有事にも対応できる柔軟な運転環境が整備されました。
定期点検や日常巡回で設備診断を行っていた現場では、異常判断が作業員の経験や感覚に頼っており、監視精度や効率にばらつきが生じやすい状況でした。とくに広いプラントでは、点検作業の工数や人員負担が課題となっていました。
設備の回転機や軸受などに無線型振動計を設置し、振動データを1時間ごとに自動収集。得られたデータはクラウド基盤で可視化され、遠隔からリアルタイムに監視できる仕組みを整備しました。速度や加速度のトレンド変化から、アンバランスやミスアライメントなどの異常兆候を早期に検知できます。
導入後は、巡回点検の頻度を減らしても監視精度が向上し、異常の早期発見が可能になりました。作業員の負担軽減と監視業務の属人化解消を同時に実現し、保全工数の削減にもつながっています。遠隔監視により、熟練者が現場に出向かずとも判断できる体制が整いました。
振動データの常時計測と可視化により、設備状態を「定量的」に評価できるようになったことで、保全判断の再現性が向上。今後はAI分析との連携により、さらなる異常予兆検知や予防保全への展開も期待されています。
設備保全へのIoT導入は、一度にすべてを変えるのではなく、段階的に進めることが重要です。まずはセンサーや通信ネットワーク、ソフトウェアなど、必要な仕組みを整理し、点検データや保全記録を一元管理できる基盤を整えることから始めましょう。データを蓄積・共有できる環境が整えば、現場判断の属人性を減らし、次の分析・最適化フェーズに進みやすくなります。
次に、現場でデータを活用する意識とスキルを高めることが欠かせません。どれほど高度なIoTシステムを導入しても、現場の理解と運用意識が伴わなければ効果は限定的です。導入の目的や活用方法を丁寧に共有し、担当者が「自分の業務を楽にする仕組み」として受け入れられるようにすることが、定着の第一歩といえるでしょう。
IoT化は単なる設備投資ではなく、現場とデジタルをつなぐ組織改革でもあります。小規模なPoC(概念実証)から始め、成果を見える化しながら段階的に拡張することで、リスクを抑えつつ現場の納得感を醸成することが可能。技術と意識の両面を整えることが、持続的な保全DXへの近道です。
IoTを活用した保全は、すべての現場に一律で適用できるものではありません。重要なのは、自社の課題に即した導入ステップを描くことです。 PoCから始めて段階的に広げれば、現場と経営の双方に無理のない導入につながります。
第一実業では、メーカー中立の立場で保全方法の検討からPoC、本導入までサポートしており、自社に合った適切な進め方を一緒に考えることが可能です。
設備保全において、人の判断や対応力はこれからも欠かせません。しかし、人手不足や属人化、コスト増加に悩む現場では、従来の方法だけでは限界が見え始めています。そうした課題に対して、IoTは現場の判断を支え、業務を効率化する有効な手段として注目されています。
センサーや通信技術によって稼働状況をリアルタイムで把握し、異常の兆候を早期に検知する仕組みを導入すれば、突発的な停止を減らしながら作業負担を軽減できます。データをもとにした判断へシフトすることで、保全業務の精度とスピードを両立させることが可能です。
自社に最適なIoT活用の形を検討したい方は、設備保全の全体像やDXの進め方をまとめた以下ページもご覧ください。現場課題の整理から導入ステップまで、次の一手を考えるヒントが見つかります。
常務執行役員CSO
上野 雅敏さん
常務執行役員CSO
上野 雅敏さん
現場課題に沿った
設備保全DXを提案
総合機械商社の第一実業は、プラント・製造業分野で75年以上にわたり現場の設備導入と運用を支援※してきました。
石油・化学・製紙など重厚長大産業の設備を扱い続けてきたノウハウを基盤に、メーカー中立の立場から各種産業へ保全DXや予知保全など新しい取り組みを提案。理想論ではなく、現場に根ざしたリアルなDX提案を実現します。