設備保全DXに関する相談をする

振動・電流値グラフから見る異常予兆の読み解き方

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目次

設備保全DXを検討する際、現場でよく挙がる不安が「データを読める人が限られるのではないか」という点です。振動波形や電流値のグラフは専門的に見えますが、最初からすべてを細かく解析する必要はありません。

重要なのは、正常時のデータを基準にして、いつもと違う変化を見つけることです。設備ごとの基準を持てば、異常の予兆をグラフ上の変化として捉えやすくなります。

振動や電流値は、回転機器やモーター、ポンプなどの状態変化を把握するうえで使いやすいデータです。数値の大小だけでなく、変化の出方や継続時間を見ることで、単なる一時的な揺らぎなのか、故障につながる兆候なのかを切り分けやすくなります。

このページでは、振動分析や電流値の見方、しきい値設定の基本を、現場で運用しやすい形に整理します。

振動データの「読み解き方」基礎

振動データを見るときは、まず正常時の状態を把握することから始めます。設備が安定して動いているときの振動値や波形を記録しておくと、そこから外れた動きが出たときに異常の手がかりを見つけやすくなります。

たとえば、通常より振動値が大きくなる、一定周期で山が目立つ、時間の経過とともに少しずつ値が上がるといった変化は、設備状態を確認するきっかけになります。

ただし、振動値が一度上がっただけで故障と判断するのは早計です。負荷変動、運転条件、周囲環境、センサーの取り付け状態によっても値は変わるため、単発の数値ではなく、傾向として見ることが重要です。

正常時の波形と異常時の波形の違い

正常時の波形は、設備や運転条件によって形が異なります。まずは対象設備ごとに「通常運転時はどの程度の振動なのか」「負荷が変わるとどの範囲まで動くのか」を把握する必要があります。

異常時には、振動の大きさが増えるだけでなく、波形の乱れや周期的な変化が見られることがあります。回転体のアンバランス、芯ずれ、ガタつき、ベアリングの劣化などでは、それぞれ違った変化が現れるため、波形やトレンドを並べて見ることが大切です。

現場で最初に見るべきなのは、細かな解析結果よりも、正常時と比べてどのように変わったかです。「いつもと違う」を早く見つけることが、予兆検知の第一歩になります。

アンバランスやガタつきは、グラフの変化として現れる

回転設備では、ローターやファンのアンバランス、取り付け部のゆるみ、軸のずれなどが振動の変化として現れることがあります。

たとえば、一定の周期で振動が大きくなる場合は、回転に合わせた偏りが疑われることがあります。振動の山が不規則に出る場合は、取り付け部のゆるみやガタつきなどを確認するきっかけになります。

もちろん、グラフだけで原因を断定することは避けるべきです。グラフはあくまで異常を見つける入口であり、実際の判断では設備構造、運転条件、点検履歴、現場確認を組み合わせて考える必要があります。

電流値のグラフから見える設備の変化

電流値は、モーターやポンプなどの負荷状態を確認するうえで有効なデータです。設備に通常より大きな負荷がかかると、電流値が上がることがあります。

たとえば、ポンプの詰まり、回転部の抵抗増加、ベルトや軸受まわりの不調などがある場合、モーターにかかる負荷が変わり、電流値の変化として表れることがあります。

一方で、電流値は生産条件や負荷変動の影響も受けます。そのため、瞬間的な上昇だけで異常と判断するのではなく、振動データや稼働状態と合わせて確認することが重要です。

電流値は「負荷の変化」を見るための手がかり

電流値のグラフを見るときは、通常運転時の範囲から外れていないか、同じ条件なのに値が高くなっていないか、上昇傾向が続いていないかを確認します。

特に、同じ設備・同じ運転条件で電流値がじわじわ上がっている場合は、摩擦や詰まり、回転抵抗の増加などを確認するきっかけになります。

電流値は、振動のように原因を細かく切り分けるためのデータというより、設備にかかる負荷の変化を早く察知するための指標として使うと運用しやすくなります。

振動データと電流値を組み合わせて判断する

振動データと電流値は、どちらか一方だけで見るよりも、組み合わせて確認することで判断しやすくなります。

たとえば、振動値が上がり、同時に電流値も上がっている場合は、設備に機械的な負荷がかかっている可能性を考えやすくなります。反対に、電流値だけが一時的に上がっている場合は、生産条件や負荷変動の影響も含めて確認する必要があります。

複数のデータを並べることで、単なる一時変動なのか、設備側の異常兆候なのかを切り分けやすくなります。

異常に気付きやすくする「しきい値」設定のコツ

しきい値とは、正常と注意、異常を分けるための基準値です。振動値や電流値が一定のラインを超えたときに注意表示やアラートを出すことで、現場担当者が状態変化に気づきやすくなります。

しきい値設定で重要なのは、最初から完璧な基準を作ろうとしないことです。設備の種類、運転条件、負荷、設置環境によって正常値は変わるため、導入初期は仮の基準を置き、運用しながら調整していく考え方が現実的です。

しきい値が厳しすぎると、異常ではない変化にも反応してアラートが増えます。一方で、基準が緩すぎると、必要な変化を見逃すおそれがあります。現場に定着するしきい値は、実機データを見ながら育てるものです。

統計的な基準と、実機に合わせたチューニング

しきい値には、あらかじめ決められた基準値を使う方法と、自社設備の過去データをもとに決める方法があります。

基準値を使う方法は、導入初期でも判断しやすい一方で、設備ごとの個体差や運転条件を十分に反映できない場合があります。過去データを使う方法は、実機に合った判断に近づけやすい一方で、データの蓄積と見直しが必要です。

そのため、初期段階では一般的な基準やメーカー推奨値を参考にしつつ、運用データを見ながら調整する流れが考えられます。設備ごとの正常値が見えてくると、アラートの精度も高めやすくなります。

大切なのは、しきい値を一度設定して終わりにしないことです。季節、負荷、生産品目、設備更新などで状態は変わるため、定期的な見直しが必要になります。

アラートの出しすぎを防ぐ

しきい値を低く設定しすぎると、現場には多くのアラートが届きます。最初は注意深く確認していても、異常ではない通知が続くと、担当者がアラートに慣れてしまい、本当に重要な変化を見落とすおそれがあります。

設備保全DXでは、データを取ることだけでなく、現場が判断しやすい通知に整えることが重要です。注意レベル、要確認レベル、停止判断が必要なレベルを分けておくと、対応の優先順位を付けやすくなります。

アラートは多ければよいものではありません。現場が動ける数と内容に絞ることが、データ活用を定着させる条件です。

専門知識がなくても判断しやすい画面づくり

振動分析や波形解析は、専門知識が必要な領域です。しかし、現場で毎日使う画面まで専門家向けに作ると、導入後に使われなくなるおそれがあります。

保全担当者が最初に知りたいのは、波形の細かな意味ではなく、いま設備が正常なのか、注意すべき状態なのか、すぐ確認が必要なのかという判断です。

そのため、グラフを表示するだけでなく、状態を段階的に示す画面設計が重要になります。赤・黄・青のような表示で状態を分ければ、専門知識がない担当者でも直感的に確認しやすくなります。

「赤・黄・青」で状態を分けるメリット

設備状態を色で分けると、担当者はまず全体の状態を把握できます。青は通常、黄は注意、赤は要確認というように段階を分ければ、細かな数値を読む前に優先順位を付けやすくなります。

ただし、色分けだけに頼る運用は避けるべきです。黄色になった理由、赤になった時刻、その前後のトレンド、過去の発生履歴まで確認できる設計にしておくと、現場での判断が深まります。

直感的な画面と詳細データを組み合わせることで、初心者は状態を把握しやすくなり、詳しい担当者は必要に応じて深掘りできます。

自動判定は「人の判断をなくす」ものではない

自動判定機能は、現場担当者の判断を助けるための仕組みです。しきい値や過去データをもとに注意状態を表示できれば、毎回グラフを細かく読み込まなくても、確認すべき設備に目を向けやすくなります。

一方で、自動判定だけで原因まで断定できるわけではありません。運転条件の変化や一時的な外乱によって数値が動くこともあるため、最終的には設備の状況や点検履歴と合わせて判断する必要があります。

自動判定の役割は、現場の経験を置き換えることではなく、見るべき設備を絞り込み、判断のばらつきを減らすことです。

第一実業が提案する、現場に定着するデータ活用

第一実業は、製造業・プラント業界で75年以上にわたり現場の設備導入と運用を支援してきた企業であり、メーカー中立の立場から、各種産業へ保全DXや予知保全などの取り組みを提案できます。

振動センサーや監視ツールは、導入すればすぐに効果が出るものではありません。どの設備を監視するのか、どのデータを見るのか、どの基準でアラートを出すのかを、現場条件に合わせて設計する必要があります。

第一実業は、複数のメーカー製品や技術を横断的に比較し、現場条件に合わせて組み合わせることを重視しています。

設備保全DXで重要なのは、専門家だけが使える仕組みにしないことです。現場担当者が日々の点検や異常対応で使いやすい形に整えることで、データ活用は「導入しただけ」から「現場で使われる仕組み」へ変わります。

振動や電流値のグラフを読み解く力は、一部の熟練者だけに任せるものではありません。正常時のデータ、しきい値、自動判定、直感的な画面表示を組み合わせることで、現場全体で異常の予兆を捉えやすくなります。